冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

能・狂言

「翁 弓矢立合 三人之舞」(大槻能楽堂)

明けましておめでとうございます。 元旦から大地震のニュースが飛び込んできて、「おめでとう」と言うのをためらってしまうような年明けでした。 阪神淡路大震災で被災した経験がありますので、震度4や5の余震が繰り返しやってくる怖さや、ライフラインが途…

「道成寺」(大槻文藏裕一の会 大槻秀夫三十三回忌追善公演)つづき

この日のプログラムの最後が「道成寺」です。シテを務めたのは大槻裕一さん(26歳)。大槻文藏さんの芸養子です。「道成寺」はもちろん初演。つまり、先日テレビで放送された観世三郎太さんと同じく「披き(ひらき)」なのです。 出演者の顔ぶれはとても豪華…

「道成寺」(大槻文藏裕一の会 大槻秀夫三十三回忌追善公演)

なかなか書けずにいた「道成寺」(大槻能楽堂、11月12日)の話です。日にちが経つと記憶がどんどん薄れてしまって。。。当日、プログラムに書き込んだメモ書きと、かすかな記憶を頼りに記していきます。 文藏さんのお父さん、大槻秀夫さんの三十三回忌追善公…

テレビで見た能「道成寺」(観世能楽堂)

11月12日(日)に大槻能楽堂で能「道成寺」を見ました。そのことを書く前に、少し前にテレビで見た「道成寺」について記しておきます。 10月29日のEテレ「古典芸能への招待」という枠で放送されたものです。内容は6月18日に東京の観世能楽堂で行われた「第…

能「檜垣(ひがき)」 大槻能楽堂(9月18日)

「檜垣」はあまたある能の曲の中でも最も扱いの重い作品の一つで、めったに上演されません。シテ(主人公)の檜垣の女は別格の上手でなければ演じきれない難しい役です。その「檜垣」が、私の一番好きな能楽師さん=大槻文藏さんのシテで見られることを知っ…

TTR能プロジェクト 「和魂Ⅸ 観世流vs.金剛流 流儀大解剖!」(湊川神社)その2

当日のプログラムを紹介します。細部まで詳しく書くのは私自身の記録として残しておきたいからです。 舞囃子 観世流「錦木」 シテ 大槻裕一 地謡 浦田保親、大江信行、齋藤信輔、笠田祐樹 笛 斉藤 敦、小鼓 成田 奏、大鼓 山本寿弥 舞囃子 金剛流「天鼓 盤捗…

TTR能プロジェクト 「和魂Ⅸ 観世流vs.金剛流 流儀大解剖!」(湊川神社)

9月最初の日曜日、神戸の湊川神社神能殿で表題の公演を見ました。去年は観世流vs.宝生流バージョンで行われ、流儀による謡や舞の違いがよくわかって、最高に面白かった。今年はシテ方五流の中で唯一関西(京都)に本拠地を置いている金剛流との比較なので、…

能「道成寺」ほか(「第五回記念 杉信の会」、京都観世会館)…その4

こんな調子で演目を順番に紹介していたのではなかなか「道成寺」にたどり着かないので、3番目の「猩々乱」から6番目の「鷺」までは省略します。どれも「すごいものを見せてもらった」「聴かせてもらった」と感動の残るものばかりでした。 ただ、「末広かり」…

能「道成寺」ほか(「第五回記念 杉信の会」、京都観世会館)…その3

上演に先立って、杉信さんが観客へのお願いをアナウンス。揚げ幕の端からちらっと姿が見えたので、その場所から話されたみたいです。飲食禁止、撮影・録音の禁止、スマホの電源を切ってください、でも曲が終わった後の拍手はどうぞ盛大にお願いします、とい…

ろうそく能「半蔀」の立花

「半蔀 立花供養」の立花を写真に撮ってあったことを忘れていました。今日見つけたのでアップしておきます。「赤い花」と思っていたのは葉でした。季節は初夏なのに紅葉した葉を使っているところが謎です。

能「道成寺」ほか(「第五回記念 杉信の会」、京都観世会館)…その2

「第五回記念杉信の会」の曲目と出演者 1、三番叟(さんばそう) 京舞(創作) 舞 井上安寿子 後見 観世淳夫 笛 杉信太朗 2、ごあいさつ 3、舞囃子「猩猩乱(しょうじょうみだれ)」 猩々 観世淳夫、林宗一郎 大鼓 谷口正壽、小鼓 林吉兵衛、太鼓 小寺真…

能「道成寺」ほか(「第五回記念 杉信の会」、京都観世会館)…その1

白馬から帰った翌々日の7月30日(日)、京都観世会館へ。「第五回記念 杉信(すぎしん)の会」を見に行きました。「杉信」というのは笛方(笛を吹くことを専門にしている能楽師さん)の杉信太朗さんのニックネームです。 初めて杉信太朗さんの笛を聴いたのが…

大槻能楽堂でろうそく能「半蔀(はじとみ)」

7月に2度、能を見ました。順番に書いていきます。 7月14日(金)の夕方、大槻能楽堂へ。毎年7月に行われている「ナイトシアター ろうそく能」を見るためです。 まず点灯式。照明が消されて、舞台を囲むように置かれた和ろうそくに火が灯されます。場内が神秘…

亀井広忠さん 『12人の花形伝統芸能 覚悟と情熱』(中公新書ラクレ)から

亀井広忠さんの大鼓は何度も聴いたことがあります。とりわけ印象が強いのは「三番叟」です。「三番叟」の大鼓はこの人しか考えられないと思うほど。毎回、初めの一打から舞台の空気が変わります。 お父さんの亀井忠雄さんは同じお仕事(能の大鼓方)で人間国…

本の紹介 『12人の花形伝統芸能  覚悟と情熱』(中公新書ラクレ)

よく訪問しているブログで紹介されていた本です。中井美穂が読売新聞で2018年から連載していたインタビュー記事に手を入れて本にしたもの。発行されたのが2019年10月で、それから3年半が経った今、この本に登場する人たちの多くは中堅クラスの中でのトップ…

能「小塩(おじお)」

カタクリの花を堪能した小塩山。聞いたことのある名前だけど、なんだったかな? そうそう、能に「小塩」という曲があるのです。名前は知っているけれど見たことがなくて、内容もわかりません。喜多流能楽師、粟谷明生さんのブログをのぞくと、上演したときの…

謡は自分の声域で謡える

謡のお稽古が好きになった理由の一つは、自分の出しやすい声域でできるところです。 西洋音楽ではハ長調の「ド」はこの高さというように、客観的で厳密な音の基準が決まっていますが、日本の古典的な声楽には本来、それがないらしい(私も正確なことはよく知…

能「通小町(かよいこまち)」(大槻秀夫師三十三回忌追善能、大槻能楽堂)

「義母の思い出」連載中(?)で書きそびれていた、能の公演の感想です。2月11日に大阪の大槻能楽堂で見ました。この日のプログラムは連吟2曲、能「通小町」、狂言「惣八」、能「砧(きぬた)」、仕舞4曲、舞囃子「融(とおる)」、能「乱(みだれ)」と盛…

新春能「翁」(大槻能楽堂) 1月4日

何年前からか、毎年、お正月の4日には大槻能楽堂で「翁」を見ています。今年は以前も書きましたように、私の大好きな大槻文藏さんが出演されないので、残念でたまらなかったのですが、それでもやっぱり「翁」を見ないとお正月が来た気がしないのです。 今年…

謡のお稽古 2022年

昨年の4月から始めた謡のお稽古。月に2回、カルチャーセンターに通っています。今年は「土蜘蛛」の途中から始まり、2月から「経正」へ進み、4月に終えました。 入門してからここまでは、先生が謡本の一部をお手本として謡い、すぐ続けて私がその真似をして謡…

2022年 観能記 つづき

9月10日 宝生流 「小督(こごう)」 枚方市総合文化芸術センター 七宝会公演 シテ 山内崇生 ワキ 福王和幸 トモ 柏山聡子 局 石黒実都 アイ 茂山千之丞 地謡 辰巳満次郎ほか 大鼓 山本寿弥 小鼓 上田敦史 笛 貞光智宣 当日もらったプログラムからあらすじを…

2022年 観能記

春ごろまで、鑑賞した能の公演について書いていましたが、その後はサボっていました。記録を残しておきたいので、簡略に記しておきます。 3月26日 大槻能楽堂 喜多流「邯鄲(かんたん)」 シテ 粟谷明生 チラシなどの資料を処分してしまったので、ワキやお…

桜舞い散るなか、篠山春日能「二人静」を見ました

9日(土)、JR篠山駅からバスに乗って春日神社へ。毎年この時期に開かれる「篠山春日能」を見てきました。 こちらの能舞台は、江戸時代末期に、江戸城内にあったものとまったく同じ寸法で作られたのだそう。歴史ある建築物ならではの風格が感じられます。 傍…

「春の素謡と仕舞の会」(京都観世会館)

3月13日(日)、久しぶりに素謡を聴きに京都観世会館へ行きました。プログラムは素謡「高砂」「弱法師(よろぼし)」「千手」「天鼓(てんこ)」。仕舞が12番でした。 「高砂」はよく知られているご祝儀の曲。播州の高砂の浦から大阪の住吉浜へと、海が見え…

番囃子「求塚」(2月27日、京都観世会館)

京都観世会2月例会に行きました。プログラムは番囃子「求塚(もとめづか)」、狂言「口真似」、能「熊野(ゆや)」、仕舞「竹生島」「雲林院」、能「山姥」でした。 「求塚」のあらすじを「銕仙会 能楽事典」のサイトからお借りします。 早春のある日。僧の…

「靱猿」、野村万作90歳の名舞台(大槻能楽堂)

書いておきたいと思いながら、ついつい書きそびれていたことを記しておきます。 1月4日に大槻能楽堂で能「翁」を見たとき、プログラムは「翁」の次に狂言「靱猿(うつぼざる)」、そして能「大会(だいえ)」でした。 最後の「大会」も見せ場が多くて楽し…

能「翁」(大槻能楽堂)

4日に大槻能楽堂で大槻文藏さんの「翁」を見ました。私にとって、ここ数年、お正月の恒例行事です。昨年はコロナのため公演がなかったので、今年再び文藏さんの「翁」を拝見できたのはとびきりうれしいことでした。 「翁」は成立年代がよほど古い芸能である…

狂言「月見座頭」(大槻能楽堂)

11月21日に大槻能楽堂で能「碁」を拝見したとき、それに先立って狂言「月見座頭」が上演されました。能と狂言はセットで、能の公演を見ると、狂言も見ることになります。今どきのお笑いと違って、狂言の笑いはテンポが緩やかでおおらか。良い気持ちになれて…

能「碁」(大槻能楽堂) つづき

「碁」、能にしては風変わりなタイトルです。宣伝用のチラシなどから源氏物語の空蝉と軒端の荻が登場する場面を題材にしていることがわかりました。源氏物語は現代語訳でもちゃんと読んだことがないので、その場面だけを前もってネットで調べておきました。…

能「碁」(大槻能楽堂)

昨日、大槻能楽堂で能「碁」を見ました。大槻文藏さんが復曲(長く上演が途絶えていた作品を、史料をもとに再現し、上演すること。大槻文藏さんは多数、手がけておられます)した作品の再上演です。「大槻文藏 三番能 復曲の名曲を観る!」と題して、10月に…