冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

文化庁芸術祭賞受賞者にこの方々とこのドラマ

 文化庁芸術祭賞の受賞者が発表されました。そのリスト中に、私が今までに「いいな!」と思ってきた方や作品を複数、見つけました。

 演劇部門の優秀賞に善竹隆司さん。狂言師です。いつ、どこの舞台で拝見したのか思い出せないのですが、その声の素晴らしさ、滲み出るおかしみに酔いました。まだ若いのに、よほど修練を積んでおられるのでしょう。

 大衆芸能部門の優秀賞に落語家の林家染雀さん。芝居噺が評価されたようです。
林家染丸一門の中でも、師匠の得意分野、芝居噺を受け継いでいるのはこの方です。以前、繁昌亭で高座を何度か聴いて、魅了されました。

 このところ落語はごぶさたしています。染雀さんの受賞記念の会が開かれるなら、久しぶりに繁昌亭に足を運んでみたいです。

 テレビ・ドラマ部門では大賞にNHKの「眩(くらら)〜北斎の娘」。優秀賞の一つに同じくNHK夏目漱石の妻」。どちらも今年、感動したドラマでした。

 年末になって飛び込んできたうれしいニュースのもう一つは、評論家の渡辺保さんが芸術院会員に選ばれたこと。うっかりしてニュースを見落としていましたが、その前に芸術院賞を受賞されてもいたのです。

 渡辺保さんのお名前とお仕事は、初め、歌舞伎評論の分野で知りました。その後、伝統芸能の幅広い分野をカバーしておられることがわかりました。
 この方、Eテレ「にっぽんの芸能」の「名人列伝」というコーナーで、いつも解説を務めているのです。歌舞伎、文楽、能、日本舞踊、地唄舞長唄箏曲など、どのジャンルにも深い見識を持っておられます。

 著書多数。私が読んだのは六世中村歌右衛門を取り上げた『女方の運命』(岩波現代文庫に収録されています)。この本を読んだとき、何十年も歌舞伎を見てきて歌右衛門の舞台も何度も見たのに、私は何もわかっていなかった、と思いました。
 5歳で六世尾上菊五郎の舞台を見て、衝撃を受けたのだとか。義太夫や能も中学生や高校生の頃に初めて見て、虜になったらしいです。その感受性と批評眼の鋭さには敬服するばかりです。

 今年になって読んだのは『昭和の名人 豊竹山城少掾 魂をゆさぶる浄瑠璃』(新潮社)、『能ナビ 誰も教えてくれなかった能の見方』(マガジンハウス)。どちらも面白くて、ぐいぐい引き込まれる内容でした。

 普段から関心を持って見ている人や敬意を抱いている方が大きな賞を受賞されるというのは、うれしいものです。私など何の関係もないのに、幸せな気分になれます。

 この記事でこのブログの今年の更新を締めくくります。

    年の瀬や
体が動くありがたさ

    年の瀬やおせち作りと筋トレと