冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

初蛍

 先週、3歳の孫が久しぶりに熱を出したので、京都に住んでいる娘の家へ助っ人に行ってきました。熱はすぐには下がりませんし、娘は何日も続けて仕事を休むわけにいかないので、娘の家で孫の面倒を見たのです。一泊、1日半でした。

 晩御飯を婿も一緒に食べている時、ふと蛍が話題になりました。私が、生まれてからまだ一度も蛍を見たことがない、と話すと、娘夫婦が家のすぐ近くの川に蛍が出ていると言うのです。
 食後、さっそく見にいくことにしました。娘は孫を抱っこしていました。

 幅せいぜい4mくらいの浅い川が流れています。川べりに立って向こう岸を見ると、水の少し上のあたりに3つ4つ、光るものがいます。町中なので、あたりは真っ暗ではないのですが、ちゃんと見えました。
 じっと見ていると、つーとゆっくり動きます。初めて見る蛍です。感激でした。
 この記事のタイトルの「初蛍」は、その年初めて見た蛍という意味ですが、私にとっては二重に「初」でした。

 昨日は月1回の初心者向け俳句講座の日でした。講師の先生が「蛍」を季語とする名句を11句、紹介して、解説してくださいました。「螢」と古い表記で書いたり、「ほうたる」と書いたりもするようです。

 私が一番気に入ったのは、次の句です。

    息づかひ静かな人と蛍の夜      茨木和生

 作者は奈良在住の現在70代の俳人だそう。先生が個人的にもよくご存知で、「鉄腕アトム」のお茶の水博士のような風貌なんですって。この句の繊細で少しロマンチックな詩情。人は外観ではわからないものですね。

 こんな句もありました。とても有名な句らしいのですが、私は初めて知りました。

    じゃんけんで負けて蛍に生まれたの    池田澄子

 話し言葉で平明で、まるでつぶやきのような俳句。びっくりです。俳句って多彩というか、世界が広いのですね。

 先生が「ぜひご自分なりの蛍の句を詠んでみてください」とおっしゃいましたが、まだできません。新鮮な発想をするということ、難しいです。