二つの音楽映画
昔から音楽映画が大好きです。一人または複数のアーティストを主人公として、その人生や音楽活動を描いた作品。音楽がたっぷり聴けるところに何よりの魅力を感じます。
このところ、たて続けに二つの音楽映画を見ました。一つ目は「ボヘミアン・ラプソディ」。主に70年代から80年代にかけて活躍したイギリスのロックバンド「クイーン」のメインボーカリスト、フレディ・マーキュリーが主人公です。登場人物はすべて俳優さんが演じ、音楽はクイーンの本物を使っています。
11月9日の公開直後に見て、「すごーく良かった!」と周囲に言いふらしていたら、その後、予想外の大ヒットに。私と同じように感動した人が多かったのでしょう。
70年代後半から80年代にかけては、私の場合、二度の出産を経てその後は育児と仕事に追われて過ごした時期でしたので、クイーンというバンドの名前は知っていましたが、音楽には触れたことがありませんでした。大好きな伝統芸能の舞台さえ見ていなかったくらいです。91年にフレディ・マーキュリーが亡くなったことも、ニュースの断片として耳にしただけでした。
10年くらい前から、ちょっとしたきっかけでクイーンの音楽をYouTubeで聴くようになりました。曲もフレディの歌声も素晴らしい! 生きているときに一度くらいライブを聴きに行きたかった…などと思っても、あまりにも遅過ぎる後の祭りです。
そんな経緯もあり、この映画が公開されるという情報は1カ月くらい前から入手していて、封切りを待ちわびていました。
ストーリーについてはネタバレになるので触れませんが、案外シンプルとも言えます。欠点も含めて、フレディの人間像がとても魅力的。とはいえクイーンのほかのメンバーがいなかったら、彼は厄介なはみ出し者で生涯を終えていたかもしれません。
上映が始まるとすぐに引き込まれ、一気にラストまで見てしまいます。そしてスケールの大きな感動を味わうことができます。
音楽映画の醍醐味である音楽の素晴らしさも満喫できます。クイーンの創造した音楽、フレディ・マーキュリーの歌声が心の奥底にまでしみとおってくるのです。言葉に尽くせないほどの喜びが湧いてきます。
レディー・ガガがその名前をクイーンのヒット曲「RADIO GA GA」から取ったということに初めて気づきました(「RADIO GA GA」という曲を聴いたこと自体が初めてでした)。
実はすでに2回見たのです。2回目には、ちょっと疑問を感じる部分も出てきました。それでも見応え・聴き応え十分の秀作という評価は変わりません。
もう一つはエリック・クラプトンを主人公にした映画「エリック・クラプトン 12小節の人生」です。こちらはすべて実写で、いわばノンフィクション仕立てです。
このアーティストについては、私はアルバム「アンプラグド」(92年発表。でも、私がCDを買ったのは数年後です)からのファンで、大阪城ホールで開かれたライブにも過去3回、足を運んでいます。最近はすっかりご無沙汰していますが。
クラプトンがひどいドラッグ中毒で、治療のために何度も入院したことがあるという話は前から知っていましたが(30年くらい、ずっと中毒だったらしいです)、この映画を見て重度のアルコール中毒でもあったと知りました。よく死ななかったものだ! ドラッグをやめる苦しみからアルコールに溺れていったという面もあったようです。
アルコール漬けでどんよりした目をして座り込んでいる姿がアップで映し出されます。こんなシーンをどうやって撮影したんだろうと驚いてしまいました。
「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリーが歩んだ人生の壮絶さを目の当たりにしましたが、エリック・クラプトンの人生も別の意味で凄まじいです。苦しみから逃れようとしてドラッグにはまったみたいです。
数十年に及ぶ地獄のような苦悩からようやく復活を遂げたこの人の、その後生み出した音楽、例えば「チェンジ・ザ・ワールド」には突き抜けた美しさが感じられます。「ティアーズ・イン・ヘヴン」は悲しすぎますが。
世界的に有名なアーティストって、みんな言葉に尽くせないような苦しみを経験してきているんでしょうか。そういう人たちだからこそ、聴く者の魂に触れる音楽を創造することができるんでしょうか。
今後、ホイットニー・ヒューストンの映画も公開されるそうです。あの人も素晴らしい声の持ち主でした。ぜひ見に行きたいと思っています。