冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

ドラマ「昭和元禄落語心中」続き

 ドラマ「昭和元禄落語心中」の中で、一つだけ名場面を選ぶとするなら、私は第6回の一場面を推します。
 「野ざらし」を八雲(岡田将生)と助六(山崎育三郎)が掛け合いで語ってみせたシーンです。八雲が女を、助六が男を、高座ではなく助六の娘、幼い小夏の前で演じました。
 和気あいあいとした雰囲気のうちに、二人が丁々発止というような抜群の間合いでやりとりをして聞かせるのです。
 聞いていても見ていてもうきうきしました。

 数多いネタの中では助六が最後に演じた「芝浜」が最も心に残りました。「よそう。また夢になるといけねえ」。このサゲを、山崎育三郎が口にしたとき、助六の万感の思いが感じられて、鳥肌が立つようでした。
 
 あとは、八雲の得意ネタ「死神」を与太郎改め助六が演じた最終回。八雲の底なし沼のようにじっとりと暗い「死神」とは好対照の、能天気で笑いたっぷりの「死神」でした。
 同じ演題でも演じる人が変われば(同じ人でもその時によって変わりますが)まるで別の噺のような印象を与えるものだということを、あっけにとられるほど直截にわからせてくれました。

 落語の面白さ、奥の深さをここまで描いたドラマは今までなかったです。