冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

今年二度目の「翁」(京都観世会館)

 13日(日)、久しぶりに京都観世会館へ。「京都観世会一月例会」を見に行きました。目的は「羽衣」を見ることでしたが、最初に「翁」が上演されたので、今年二度目の「翁」を拝見することができました。

 主な出演者は次のとおりです。

    翁     大江又三郎
    三番三  茂山忠三郎
    千歳    樹下千慧(じゅげ ちさと)
    面箱    井口竜也

         大鼓   谷口正壽
    小鼓頭取     吉阪一郎
       脇鼓    荒木建作
       脇鼓    清水皓祐
    太鼓   井上敬介
    笛     杉信太朗

    後見   大江信行
          浦田保浩

 千歳の樹下千慧さんは、私が有斐斎弘道館で謡を習っていた時の先生の一人です。まだ若い能楽師ですが、素晴らしい声の持ち主。若さと力強さに溢れる千歳を見せていただきました。

 翁を演じた大江又三郎さんはシテ方の家柄、大江家のご当主。背が高くて恰幅が良く、堂々とした翁です。大槻文藏さんの翁には神々しさや霊性の高さが感じられますが、この方の翁は人間に近く、温かみが伝わってきました。

 三番三(京都観世会館のプログラムでは「三番叟」ではなく「三番三」と表記されていました)の茂山忠三郎さんも、とてもよかったです。所作や掛け声の一つ一つに意味と必然性があると感じられました。鈴は大槻能楽堂で使われたものより小ぶりに見えました。
 お囃子が途中からまるでジャズのセッションのように聞こえてきました。舞もお囃子に乗って実に心地良く、私はなぜともなく「うん、うん」とうなづきながら見つめていました。

 「翁」が終わると、小鼓の脇鼓お二人が下がり、ほかの囃子方はそのまま残ります。地謡の8人は舞台奥(「翁」の時は、地謡はこの位置です)から常の地謡の座へ移動しました。何が始まるのかと思ったら、このままの顔ぶれで次の曲「難波」に入ったのでした。

 この曲は途中、気持ちよく眠ってしまい、よくわからずじまい。収穫は、笛方の杉信太朗さんが素晴らしかったことです。「翁」の時には気づきませんでした。
 私の大好きな笛方、杉市和さんの子息で、30代半ばの若さ。音色が驚くほど濃密で滑らかで気迫に満ちていました。この方の笛は今までにも聴いたことがあるはずなのに、この日初めて聴いたような驚きに打たれました。将来が楽しみです。

 開演が11時、「難波」が終わったのは2時。3時間もの間、固い座席に座っていたので疲れてしまいました。引き続き狂言「鎧」が演じられたのですが、あまりにも疲れたし、お腹も空いていたので、いったんロビーに出ることにしました。私のほかにもここで休憩をとったお客が多かったです。
 狂言師の方々(茂山千作茂山千五郎、網谷正美)には申し訳なかったのですけれども、3時間以上ぶっ続けというのはちょっと長すぎました。番組立てをもう少し工夫していただきたかったです。

 「羽衣」については別に書くことにします。