冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

このごろハマっているドラマ

 今、毎週欠かさず見ているドラマがいくつかあります。そのうち2本は、ゲイが主人公というところが共通しています。

 一つは、「腐女子、うっかりゲイに告る」。NHKの「よるドラ」枠で土曜の夜に放送されています。タイトルが軽いノリなので、そういうドラマを想像して気軽に見始めたら、とんでもなかった。

 主人公の安藤純は高校3年生でゲイ。年上の恋人がいます。恋人は結婚していて、子どももいます。母一人子一人の母子家庭で育った純は母親に心配をかけたくない気持ちから、女性と結婚し、子どもを持つ「普通の」暮らしを追い求めます。

 同じクラスにボーイズラブが大好きな腐女子、三浦紗枝がいて、ゲイだとは知らず、純を好きになります。紗枝 は「腐女子」であることをクラスメイトに知られていじめられた辛い過去を持っています。

 純は先に書いたような動機から紗枝 の告白を受けて交際を始めます。実際、彼にとって彼女は今まで見たことのない魅力のある子だったのです。なんとかして紗枝 とSEXにこぎつけたいのですが、うまく行かず…。先週の放送では、純がゲイであることがクラス中に(学校中かも)知れ渡り、追い詰められた彼は衝撃の行動を取りました。

 難しいテーマに真摯に向き合っている制作スタッフや俳優さんたちに喝采を送りたいです。純を演じているのは金子大地。この俳優さんは初めて見ました。純役にしっかり取り組んで、微妙な感情を繊細に表現しています。紗枝役は藤野涼子。自然体の演技が素晴らしく、感嘆してしまいます。 宮部みゆき原作の映画「ソロモンの偽証」の主人公でデビューした人です。「藤野涼子」はそのときの役の名前。朝ドラ「ひよっこ」にも有村架純の友達、豊子役で出ていましたね。金子大地も「ひよっこ」に出ていたらしいのですが、覚えていません。

 もう一つのゲイが主役のドラマは「きのう何食べた?」。テレビ東京系列で木曜の深夜、というか金曜の朝0時過ぎに放送しています。西島秀俊内野聖陽という人気の高いイケメン中年俳優さんがW主演。西島秀俊は弁護士、内野聖陽は美容師という職業設定で、仲良く暮らすゲイのカップルの日常を描いています。

 二人とも中年ですから、さまざまの苦難はすでに乗り越えてきたのでしょう。終始ほっこりした気分で見ることができます。西島秀俊が演じる筧史朗(シロさん)は料理が上手で、毎回、台所で腕をふるう場面や出来上がっためちゃくちゃ美味しそうな料理を二人で食べる場面が出てきます。こんな男性と暮らしたい! と思ってしまいます。内野聖陽が演じる矢吹賢二(ケンジ)は仕草が女性っぽく、可愛らしい。

 西島秀俊は「メゾン・ド・ポリス」でもエプロン姿でアイロン掛けに精を出す元刑事役でしたし、このところ「家事をする男」の役が続いています。ご本人は私生活ではまったく家事をしない人らしいのですけれどね。

 もう1本、書いておきたいのは性的マイノリティとは全然関係のない時代ドラマ「大富豪同心」。NHKで金曜の夜に放送が始まったばかりです。

 主人公、八巻卯之助役の中村隼人は歌舞伎界の御曹司。二世中村錦之助の子息です。尾上右近と並んで、今、若手のイケメンナンバー1を争っている役者さん。シネマ歌舞伎で「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」を見たとき、二役を演じたこの人の力量が印象に残りました。テレビドラマで見るのは初めてです。さすがに身のこなしが美しく、時代ドラマにぴったりの人選でした。

 卯之助は大金持ちの商家の出。祖父が金で買った同心の仕事に就くという設定です。武道はからきしダメで体力もなく、祖父と幽霊が何より苦手。放蕩を尽くしてきて身につけた教養と人脈が思いがけず役に立つところが面白い。とはいえ、あまりの恐怖から立ったまま気絶しているのを見て剣豪が「よほどの使い手」と誤解するなど、あり得ない! 場面も多々見られます。そんなのも含めて気軽に楽しめる娯楽番組です。

 第1回を見て、私が釘付けになったのはエンディングでした。出演者が主題歌(演歌です)に合わせて踊るんです! 「カルテット」「逃げるは恥だが役に立つ」など、エンディングで俳優さんたちがダンスを披露するドラマはこれまでにもありましたが、時代ドラマでそれをやるとは! まずあっけにとられ、次には笑ってしまいました。だけど、このシーンがとても楽しいのです。

 隼人の演技力そのものは70点かせいぜい80点と言ったところ。それでも脇役がしっかりしているので見ていられますし、間の取り方などこれからだんだん上達するのではと期待しています。演出がもう少しきっちりすれば、もっといいドラマになって、シリーズ化するかもしれません。原作の小説は二十数冊もあるらしいので、ネタには困らないでしょう。