冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

能「加茂」「小袖曽我」(金剛能楽堂)

 土曜日、ふと思い立って京都の今出川にある金剛能楽堂へ。定期能(今年に入ってから第5回だそうです)を拝見しました。

 見たかった曲は「加茂」。上賀茂神社下鴨神社の由来を内容としています。登場人物が神様の「神能」。この分野が私は大好きです。

 [E:#x2606]あらすじ(当日配られた資料からお借りしました)

 室の明神に仕える神職(ワキ)が都へ上がり賀茂神社に参詣します。古代より天然の良港で栄えていた室津兵庫県たつの市)は平安時代賀茂神社神領となり、勧請されて賀茂神社(室の明神)が設けられました。神職が本社の賀茂神社に参詣し、御手洗川で水を汲もうとする女人二人(前シテ・前シテツレ)に出会いました。この能は祭祀性が強い神能ですが、最初から二人の女人が登場するのは珍しいです(通常は姥と尉)。

 川辺に白矢を立てた祭壇が築かれているので、不審に思った神職が尋ねます。「朝夕この川の水を神に手向けていた秦の氏女が、川を流れてきた白羽の矢を持って帰り家の軒に挿しておくと、男の子を産んだ。矢は天に上がり鳴る神となり、男の子は別雷(わけいかづち)の神、その母も神となって祀られた」と一人の女は賀茂三社の縁起を語り、水を汲み、神に手向けます。神秘を語る貴女は誰かと問う神職に、女人は神だとほのめかして消え失せます。(中入)

 やがて末社の神(狂言方)が現れ舞(三段の舞)を舞うと、天女の御祖の神(後シテツレ)も現れ舞(天女の舞)を舞います。御祖の神が裳裾を水に浸すと、にわかに雷鳴がとどろき渡り別雷の神(後シテ)が天から降りてきて、面(大飛出)に象徴されるように豪壮奔放に舞います。別雷の神の荒々しさは国土を守護する神威力の表現です。

 祝福を与えた御祖の神は糺の森に、別雷の神は天上へと帰って行きます。別雷は神鳴りの神で、「別」は「若」の意味です。

 前シテの優美さ、後シテの豪快さを一人で演じ分けるところにこの能の面白さがあります。賀茂神社賀茂別雷神社上賀茂神社)と賀茂御祖神社下鴨神社)の総称で、天女の御祖とは玉依姫です。

・・・・・・・・・・・ここまで・・・・・・・・・・

 シテは金剛永謹(ひさのり)さん。笛はお久しぶりの杉信太朗さんでした。最初のお調べがとても長い。聞き慣れたお調べの倍くらい続きました。金剛流独特なのかもしれません。音色が安定していないように聞こえ、スギシン(こういうニックネームらしい)くんにしては珍しいなと首を傾げましたが、舞台ではいつもどおりでした。

 曲そのものはどうだったかというと、なぜか眠くなってしまい、何度も我に帰ったものの、よくわからずじまい。後シテの面が大きく恐ろしげで、シテの体全体にも舞ぶりにも力強さがみなぎっていたことだけを覚えています。

 「小袖曽我」はちゃんと起きて見ていました。次の記事に書きます。