冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」が映画になっています

 新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」ディレイビューイングを見てきました。昨年12月に新橋演舞場で上演された「風の谷のナウシカ」を映画にしたものです。

 宮崎駿が書いた原作は長編で、ジブリのアニメでは一部を映画にしていました。歌舞伎化を企画した尾上菊之助は原作全体を取り上げました。そこに並外れた情熱を感じます。大作になったので、新橋演舞場では昼の部と夜の部に分けて通しで上演され、今回の映画も前編と後編に分けられています。

 今、上映されているのは前編です。上映時間が3時間近くもあり、疲れるだろうなと予想していました。実際、最初の方は作品の世界に集中できずちょっと退屈したりしたのですが、その後ぐいぐいと引き込まれ、間に15分の休憩を挟んで、最後まで圧倒されるような気持ちで見続けました。

 独特の台詞回し、見得、殺陣、花道を六法を踏んで下がる場面、本水を使っての立ち回り、宙乗りなど、歌舞伎の味わいがふんだんに生かされており、見ていてワクワクしました。アニメに出てくるオームやナウシカの乗り物などをそのイメージを損なうことなく大道具にしているところも素晴らしい。音楽もアニメの主題曲を上手に取り入れるなど現代曲を使う一方で、歌舞伎音楽(義太夫など)も生で入ります。その両方がうまく融合していました。これまでに新作歌舞伎はいくつも見てきましたが、この作品は一番完成度が高く、洗練されていると感じられました。

 俳優さんはナウシカ菊之助。この企画を実現したことそのものにも素晴らしい才能が感じられます。ナウシカ役を自然な雰囲気で演じていて好感度大です。準主役とも言えるクシャナ七之助。この人、いつの間にこんなに風格のある役者さんに育ったんだろうと目を見張りました。ユパという重要な役(ナウシカの師匠)に尾上松也。声が良く、貫禄十分です。この人の成長ぶりにも驚きました。

 ほかに悪の権化のような役を巳之助が演じていて、この人はこういう役がハマるなあと納得。爽やかな青年役を右近。重々しい僧正には又五郎。どの人も好演でした。

 歌舞伎を見たことのない人でも楽しめるおすすめ作です。今、大阪ステーションシティシネマ、MOVIXあまがさき、神戸国際松竹などで上演中。チケット代は4300円と、通常の映画より高いです。後編は28日から上映が始まるようです。ぜひとも見に行かなくては!