冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

京都観世会館の字幕表示サービス

   京都観世会館では昨年から字幕サービスを提供しています。国立文楽劇場では舞台の上の方に電光掲示板のようなものが取り付けられていて、そこに太夫が語る床本の文言が表示されます。京都観世会館の場合はそういう方式ではなく、スマホのような機器を貸し出すシステムです。機器の形や大きさは国立文楽劇場のイヤホンガイドに近いです。

 開演前は、この機器の画面で能についての解説が読めます。舞台の平面図と説明(橋掛かりなど)、演者について(シテ、ワキ、地謡、囃子など)など、さまざまです。

 開演後、字幕表示が始まります。謡の文言が逐次、表示されるのです。これがとても便利です。謡の言葉は古い日本語なのでそれ自体がわかりにくい上に、シテは面をつけていることが多いので声がくぐもって、なおさら聞き取りにくいのです。地謡の謡の内容も聞き取るのはなかなか難しいです。お囃子の音が重なるというのも理由の一つです。

 謡の文言にこだわらなくても見ているだけで良い気持ちになれる曲も中にはありますが(「羽衣」など)、何を言っているのかがわかると、能鑑賞のハードルはずいぶん下がります。

 借りるには簡単な申込書を記入し、身分証明書(運転免許証など)を提示します。この手続きを一度済ませるとカードを渡され、次からはこのカードを提示すればいいだけになります。

 使用料は1000円と、ちょっと高い。使う人が増えれば値下げするかもしれませんが、今のところ少数のようです。

 もう一つ残念なのは、詞章の表示のタイミングが遅れること。シテや地謡の謡が次へ進んでいるのに、その部分が表示されるのが少し遅れます。「今、なんて言ったのかな?」と画面を見ても、まだ前の部分が残っていて、少したたないと表示が変わりません。わずかな時間差であっても、その間、目が舞台と画面を行ったり来たりすることになるので疲れます。ここのところだけ改善してもらえるといいなあと思います。