冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

能楽界の苦境

   ツイッターで見つけた川口晃平さん(HN古墳系男子さん)という能楽師さんのブログ記事です。心に迫るものがありますので紹介させていただきます。

 

これは書いていいのかわかりませんが、能楽師の主催する能公演の殆どは赤字で行われています。
それはチケットが完売した場合の収入から舞台使用料や諸経費、出演者への御礼を差し引くとゼロになる計算だからです。
チケットを高くすれば売れませんし、安くするとキャパの小さい能楽堂では収入が足りなくなります。
そしてチケットが売り切れることはなかなか有りませんから、始めから赤字を見越して行われるのです。
また多くの場合、公演の宣伝から諸々の手配、チケットの配送など全ての事務作業を能楽師個人が行わなくてはなりません。
能楽師は公演の当日まで役者として研鑽しつつ、同時にこの事務作業に追い詰められなくてはならず、なかなか役者業に集中させてもらえません。
それでもこの曲をこの共演者で舞ってみたい、挑戦してみたいという思い一つで、能楽師は公演を打ちます。
ですからその意気に感じて、できるだけ多くのお客様が能楽堂に足を運んで下さることを願ってやみません。

歌舞伎のように企業によって運営されず、文楽のように国から補助を受けていない能ですが、世界一の美意識と日本文化の粋が生きている、人類にとって失うべからざる古典です。
これほど価値のあるクラシックを、なかなか楽に運べない能役者達の掌に任せておくのは本当に危うい感じがいたします。
また、この苦しい台所事情で、能楽師は大名が威信をかけて作らせていた能面能装束を保全し、舞台で使用し次代に伝えていかなくてはなりません。
殊に能装束は新しく作り継いでいくことが重要ですが、技術の粋を尽くした衣装ですから当然の如く非常に高価で、なかなか普段手の届くものではありません。
それでもお金を貯めては装束を作るのが能楽師という人々です。
能楽師が作らなくなれば、装束屋さんも潰れ(実際ここ数年でいくつか廃業しています)、室町以来蓄積してきた高い技術や美意識も風化していきます。
装束以外の小道具も職人の高い技術に支えられてきましたが、職人は減る一方で危機的な状況です。
また、能面能装束の海外流出も続いています。
そんな厳しくなりつつある状況のなか、能楽師たちがなぜ能を決して手放さず日々勤めているかと言えば、能の素晴らしさを強く信じているからです。
それは、あらゆる国民が享受している日本文化の屋台骨の一角を、大きな喜びをもって支える活動です。
皆さんにも参加していただきたい。
能にふれ、能を習い、能を見に来て、能のファンになってください。
必ずや能は人生を歩む上での宝物になると信じています。

プロフィール

古墳系男子のプロフィール

古墳系男子

性別:
男性
誕生日:
1976年4月13日
お住まいの地域:
東京都
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