冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

面白い作品が多かった 春シーズンのドラマ

 この春の連続ドラマは見応えのある作品がいつになく多かったです。録画する番組が多過ぎて、消化するのが一苦労でした。

 中でも一番良かったのは、「コントが始まる」でした。高校の同級生3人(菅田将暉、仲野太賀、神木隆之介)で作ったコントグループ「マクベス」。10年間、続けてきましたが売れず、解散ライブを開くことになります。

 30歳を目前にした「今」の3人と、その周囲の人々(有村架純芳根京子鈴木浩介伊武雅刀など多彩)。高校時代や、チームを結成してからの頃に何度も戻りながら、解散ライブに向かって、3人それぞれの人生が展開していきます。菅田将暉有村架純という組み合わせの演技が映画で評判だったので見始めました。

 アラサーも「青春」と言うなら、まさに青春そのもの。私のような高齢者にははるか昔の時代で、今さら「青春」なんて言われても…と興醒めするかもと予想していたのに、まったくそんなことはなかったです。年齢を超えた普遍的な人間群像を描いていた、と書くと大げさかも知れません。もっと自然体で、毎回、ふんわりとした感動を味わっていました。

 一番印象に残ったのは、里穂子(有村架純)のマンションを訪れた潤平(仲野太賀)が、いつものように風呂場に入って足を洗おうとすると、突然、湯船の蓋が開いて、ウエットスーツを着て人魚のふりをした奈津美(芳根京子)が飛び出したシーンでした。その時の芳根京子の可愛かったこと! 潤平がびっくりしてオタオタしているところへ、先に来ていた春斗(菅田将暉)と瞬太(神木隆之介)が顔を出します。

 潤平と奈津美は高校時代からずっと交際を続けていて、でも奈津美は少し冷めてもきていて、いつもサプライズをしたがる潤平に「なんだかなあ」という思いを抱いていたのです。それを感じ取った春斗が奈津美に、逆にサプライズをしてみれば?と持ちかけたのでした。春斗の潤平への深い理解と愛情が感じられた場面でもありました。

 ほかに、良かったのは「大豆田とわ子と三人の元夫」。初めは軽妙な会話のやりとりを楽しんでいましたが、中盤から後半にかけて、登場人物の本当の思いがだんだん見えてきて、切なくなりました。放送の最後に主題歌と共に流れるシーンがとてもおしゃれでした。大豆田とわ子(松たか子)と三人の元夫(松田龍平角田晃広岡田将生)が登場するのですが、三人のうち、その回でクローズアップされた元夫の登場時間がたっぷり長いのです。つまり、通常バージョンのほかに3パターンが用意されていたわけで、「凝っているなあ」と感心しました。

 「今ここにある危機とぼくの好感度について」。渡辺あやさんの脚本らしく切れ味の鋭いブラックコメディでした。松重豊演じる学長が途中からとてもダンディでかっこいい初老男性に変身します。背が高く痩せていて小顔なので、立ち姿が様になって、背中に哀愁が感じられる場面もあり、この俳優さんの新しい魅力を発見できました。5回しかなかったのが残念でした。

 「イチケイのカラス」は現実味が乏しかったけれど、毎回スカッとするので楽しめました。「コタローは一人暮らし」も、最初は幼稚園児が一人暮らしするなんてありえない! と思っていましたが、背景にDVやネグレクトのようなシリアスな問題が出てきたり、コタローに関わる大人たち(横山裕生瀬勝久百田夏菜子ら)が良くて、それなりに見応えのある作品になっていました。

 そろそろ夏の連続ドラマが始まっていますが、今のところ食指が動く作品が見当たりません。豊作の後は不作かなあ。