冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

桜舞い散るなか、篠山春日能「二人静」を見ました

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 9日(土)、JR篠山駅からバスに乗って春日神社へ。毎年この時期に開かれる「篠山春日能」を見てきました。

 こちらの能舞台は、江戸時代末期に、江戸城内にあったものとまったく同じ寸法で作られたのだそう。歴史ある建築物ならではの風格が感じられます。

 傍らに大きな桜の木が寄り添うように立っており、花びらが風に乗ってしきりに舞い落ちてきます。舞台の上が花びらで埋め尽くされるほどでした。開演前にスタッフさんが箒で掃除しましたが、上演中もはらはらと落ち続けます。床に落ち、演者の髪や装束にも落ち、見ている私の服やバッグにも落ちました。淡いピンクの桜が風に吹かれて舞い散り続ける、その美しさといったら! これ以上の舞台効果はないと思えるほどでした。

 上演されたのは能「二人静」、狂言「仏師」、能「天鼓」。中でも「二人静」は幻想的な美しさがこの日のシチュエーションにぴったりでした。

 あらすじを銕仙会能楽事典のサイトからお借りします。

 

 正月七日、吉野 勝手神社の神職(ワキ)の命を受けた女(ツレ)が七草を摘みに菜摘川へ行くと、一人の女の霊(前シテ)が現れ、自らを回向して欲しいと願う。名を尋ねられた霊は、疑う者がいたら女の体に憑依して名乗ろうと告げ、姿を消してしまう。

 神社へ帰った女が事の顛末を語っていると、突如声色が変わる。先刻の霊が憑依したのだった。自らを静御前と名乗る憑霊に、まことの静ならば舞を舞うよう告げる神職。彼女が神社に伝わる生前の静の舞装束を着ていると、その背後に、在りし日の静の姿(後シテ)が現れた。往時の記憶を語り舞う二人の静。都落ちの果てにこの山へ迷い入り、やがてはそこからも落ち延びていった悲しみや、頼朝の前へ連れ出されて舞を強いられた苦しみを語った静は、辛いばかりの生前の日々を思いつつ、回向を願うのだった。

・・・・・・・・・・ここまで

 

 シテ(静御前の霊)とツレ(菜摘女)が同じ装束をまとって同じ舞をする「相舞」の場面がたまらなく魅力的な曲です。しかもこの日のシテは大槻文藏さん。女性の役を演じたときの美しさは今の能楽界の中でも随一だと思います。ツレは芸養子の大槻裕一さん。前半は面に可愛らしさが見え、静が憑依してからは神秘性の感じられる表情に変わりました。同じ面なのに、不思議でした。

 相舞の美しさ、次の動画で感じだけはわかるでしょうか。

 

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 ほかの出演者は、ワキ、福王茂十郎、大鼓、山本哲也、小鼓、上田敦史、笛、斉藤敦さんなどでした。

 「天鼓」はシテ、観世銕之丞、ワキ、福王知登、大鼓、山本寿弥、小鼓、上田敦史、太鼓、上田慎也、笛、斉藤敦ほかの皆さんでした。