冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

新聞の俳句投稿欄を読んで

 週に一度掲載される新聞の俳句読者投稿欄を読むのが楽しみになってきました。必ずいくつか、心に「!」マークが灯る作品があります。

 今日の私の特選は

   ひと眠りしに行く床屋冬隣   大野兼司

 でした。響きの柔らかい季語「冬隣」がぴったりの句!
 「床屋」という言葉遣いといい、全体の雰囲気といい、年配の方なんでしょうね。
 新聞を読む人も、俳句を作る人も高齢化しているそうですから、俳句欄に掲載されている句の作者は全体として年齢層が高いのかもしれません。
 そういう私も「高齢者」の一人ですけれども。

 ほかにも、季語の使い方や言葉の選び方、漢字表記とひらかな表記の使い分け、情景の切り取り方などの点で「いいな!」と思った句を挙げてみます。

    蔓どこも力を抜かぬままに枯れ   本間  清

    幸せの数がほどなり実南天     福本秀昭

    空港の広き硝子戸いわし雲     大西まりゑ

    青空に梯子立て掛け松手入     かじもと浩章

    来た道を引きかへすほど秋深し   黒木淳子

    行く秋や行者の滝もかくほそり    秋田幻草

    野分去りころがる蝉の殻一つ     林   梢

    つはぶきに静かな雨の似合いけり  岡村  実