冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

TTR能プロジェクト 「和魂Ⅸ 観世流vs.金剛流 流儀大解剖!」(湊川神社)

 9月最初の日曜日、神戸の湊川神社神能殿で表題の公演を見ました。去年は観世流vs.宝生流バージョンで行われ、流儀による謡や舞の違いがよくわかって、最高に面白かった。今年はシテ方五流の中で唯一関西(京都)に本拠地を置いている金剛流との比較なので、興味しんしんで見にいきました。

 TTR能プロジェクトは小鼓方の成田達志さんと大鼓方の山本哲也さんの二人が企画・運営しているユニットです。TTは達志と哲也の頭文字だろうと想像がついていましたが、Rがどういう意味なのかがずっとわからずにいました。

 この日、ロビーでTシャツやクリアファイルなどのオリジナルグッズが初めて販売されました。Tシャツの胸に書いてある文字を見ると、Rはrevolution、つまり革命、大変革のことでした。確かに革命! 能という古い世界で囃子方が公演を主催するのはたぶん異例のことですし、まして今回のような流儀を比較する企画なんてとんでもない話で、よく実現できたものだとびっくりしています。それも1回で終わらず2回目を迎えるとはすごいです。

 もちろん観世流金剛流、両方の家元の許可をもらっているのです。家元さんたちもよく許したものだと感心します。そこには能楽界の衰退傾向への危機感が感じられます。観客も、謡や仕舞を稽古している人も数が減り、高齢化しています。斬新な取り組みを通して能のファンが増えればOK! 結果オーライ! ということなのでしょう。とりわけ金剛流から若宗家(家元の子息、次の家元)の金剛龍謹(たつのり)さんが参加しているところに、金剛流側の意気込みが感じられました。

 この日、最初のあいさつで舞台に現れたのは成田さんだけ。山本さんは等身大のパネルと、成田さんのスマホに録音された音声だけの参加でした。6月ごろから体調を崩して静養中なのだとか。次のTTR公演には必ず出演します、とのことでした。次の公演は2月なので、そんなに長くかかる病気なのかと、心配になってしまいました。厄介な病気でなければいいのだけれど。いつも通りの元気な声だったので、大丈夫だとは思うのですが。

 前置きが長くなってしまいました。プログラムは次の記事で紹介します。