冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

いずみホールで藤原道山さんの尺八を聴く

 先週の土曜日、大阪市内にある住友生命いずみホール和楽器のコンサートを聴きに行きました。姉がチケットを取っていたのに急用ができて行けなくなったとかで、私にチケットを譲ってくれたのです。

 「新・日本の響き 和のいずみ」と題するコンサートで、シリーズの第1回らしいです。プロデュースしたのは片岡リサさんという箏、つまりお琴の演奏者です。司会・進行もこの方。美人で頭も人柄も良さそうな方でした。

 ゲストは尺八奏者の藤原道山さん。有名人ですが、私はテレビ、それもEテレの子ども向け番組でしか見たことがなくて、生で演奏を聴くのはこの日が初めてでした。

 オープニングに大阪府立高校の高校生たちが箏と三味線の合奏をしたあと(とても上手でした)、片岡さんの紹介で藤原道山さんが登場。舞台下手の袖から着物と袴の和装で「アメイジンググレイス」を吹きながら現れました。その音色の美しいこと! 「本当に尺八なの?」と信じられないくらいでした。滑らかで濃くて潤いの豊かな音なのです。尺八という楽器を再発見したような気持ちになりました。

 この後のプログラムでは宮城道雄の「春の海」などの古典作品を尺八だけで演奏したり、箏と合奏したり。休憩を挟んで後半では現代作品を5曲、こちらもソロや箏との合奏で聴かせてもらいました。どれも素晴らしかった! 後半では道山さんは洋服でした。黒を基調としていて、個性的なアクセントの効いた装いでした。イケメンなのでどんな格好をしても似合います。

 尺八といえば、低音が中心で、かすれたような音を出す渋い楽器だとばかり思っていました。そういうイメージの尺八がけっこう好きで、特に「鶴の巣篭もり」という古い曲は聴いていて東北地方の原野が目の前に浮かび上がる気がして、お気に入りでした。この日も道山さんが「鶴の巣篭もり」を演奏したのですが、まったくイメージが違っていました。とてもフレッシュで暖かい。新しい世界を見せてもらった気がしました。

 片岡リサさん、それにほかにも二人、箏の演奏者が登場しました。どの方もとても上手で、ハーモニーが心地よかったです。

 もう一つ特記しておきたいのは、いずみホールの音響の良さです。尺八だけでなく箏も三味線も、今まで聴いたことがないような、深い味わいに満ちた音が響いてきました。ずいぶん前に何度かクラシック音楽を聴きに行ったことがあるのですが、そのときはちっとも気づきませんでした。

 藤原道山さんの尺八をできればいずみホールで、それが無理ならほかの場所でもいいから、また聴きに行きたいです。