TTR能プロジェクト 「和魂Ⅸ 観世流vs.金剛流 流儀大解剖!」(湊川神社)その2
当日のプログラムを紹介します。細部まで詳しく書くのは私自身の記録として残しておきたいからです。
地謡 浦田保親、大江信行、齋藤信輔、笠田祐樹
笛 斉藤 敦、小鼓 成田 奏、大鼓 山本寿弥
※盤捗(ばんしき)は小書。特殊演出を指しています
地謡 金剛龍謹、宇高竜成、宇高徳成、山田伊純
笛 斉藤 敦、小鼓 成田 奏、大鼓 山本寿弥、太鼓 前川光範
※キリ は能の最後の部分。「ピンからキリまで」はここから来ているそうです
仕舞 観世流「鉄輪 キリ」 シテ 笠田祐樹
地謡 浦田保親、齋藤信輔、大槻裕一
仕舞 金剛流「鉄輪 キリ」 シテ 山田伊純
地謡 金剛龍謹、豊嶋晃嗣、宇高徳成
実験企画
※重キ前後之替は小書。特殊演出を指しています
地謡 大江信行、齋藤信輔、笠田祐樹、大槻裕一
笛 斉藤 敦、小鼓 成田 達志、大鼓 山本寿弥、太鼓 前川光範
※白波之伝は小書。特殊演出を指しています
地謡 豊嶋晃嗣、宇高竜成、宇高徳成、山田伊純
笛 斉藤 敦、小鼓 成田 達志、大鼓 山本寿弥、太鼓 前川光範
シテ方能楽師の皆さんは、本公演のような装束や面を着けず、黒紋付と袴のシンプルな装いで演じていました。
一番興味深かったのは実験企画の「乱(みだれ)」です。「乱」というのは、「猩々(しょうじょう)」という曲の特殊演出で、酒に酔った猩々(中国の伝説の妖精で大河に棲み、お酒が大好き)が水に戯れながら喜びの舞を舞うというもの。この場面を舞台の主に上手側半分で観世流の大江信行さんが、主に下手側半分で金剛流の宇高竜成さんが舞ったのです。
同じ「乱」でも観世流と金剛流では舞の所作がまったく違っていました。金剛流は動きが大きく、変化に富んでいます。観世流は流れるように優美で洗練された印象でした。
もちろん舞台の半分だけで舞えるものではないので、二人は何度も行き交ったりしますが、能楽師さんは気配を読むことに長けた方々なので、相手の動きを注視していなくても接触や衝突は起こりません。同じ曲、同じお囃子で二つの流儀の舞を比較しながら見るのは面白くて興奮しました。
この試みは昨年の観世流vs.宝生流でも行われていて、「和魂」の目玉企画になっています。二つの流儀が舞台上で同時に舞うなんてあり得ないことで、よくこんな企画を思いついたものだ、家元さんたちがよく許可したものだと感嘆してしまいます。
最後の「船弁慶」の競演も素晴らしかったです。とりわけ金剛流若宗家の「船弁慶」は力強く気迫に満ちていて、ぐいぐいと引き込まれました。今まで「船弁慶」という曲にあまり興味が持てなかったのですが、全体を見たくなりました。観世流、金剛流の両方で拝見してみたいです。