西宮能楽堂で半能「田村」
子どもの日に初めて西宮能楽堂に行きました。昨年12月に完成したばかりの施設です。
清々しい白木の造り。
向かって右側の壁に文字がプロジェクターで映し出されています。上演中はここに謡の詞章が表示されました。
「能楽堂にも文楽劇場のような詞章を表示する電光掲示板があればいいのに」と前から思っていましたが、従来の能楽堂には似つかわしくないなあという気持ちもありました。ここではそれが違和感なく実現していました!
外光を取り入れているので、今までの能楽堂のイメージを一新するほど、内部は明るいです。
客席は80ほど。満席でした。
この能楽堂では能を初心者にもわかりやすく楽しんでもらうことを第一の目標にしているようです。プログラムにもその意図が現れています。
解説 梅若基徳
囃子ワークショップ「指揮者がいない日本の楽器」
「田村」 謡のワークショップ 梅若基徳
マンガ紙芝居 絵・渡辺睦子
梅若さん(この方が中心になってこの能楽堂を運営しているようです)は、「端午」の意味、尚武と菖蒲の結びつき、なぜ男の子の節句になったのか、なぜ柏餅を食べたり鯉のぼりを上げたりするのかなど、わかりやすくお話をされました。
柏餅、柏手など、なぜ柏が珍重されるのかというと、新芽が出るまで古い葉が落ちないからだそうです。家が衰えない、親子のつながりが続いていくめでたいものとされたようです。
また、坂上田村麻呂は渡来人、つまり朝鮮半島から渡ってきた人なのだそうです。大陸の文化を積極的に取り入れ(それを消化して日本独自の文化を築き上げるのですが)、外国人を招き入れて手厚くもてなし、適材適所に配置して能力を発揮してもらっていたのです。
また、坂上田村麻呂は渡来人、つまり朝鮮半島から渡ってきた人なのだそうです。大陸の文化を積極的に取り入れ(それを消化して日本独自の文化を築き上げるのですが)、外国人を招き入れて手厚くもてなし、適材適所に配置して能力を発揮してもらっていたのです。
能楽のそもそものルーツとされる秦河勝も渡来人でした。
お囃子のワークショップは、笛、小鼓、大鼓の奏者の方々(若い人ばかりでした)がそれぞれ、楽器の特徴を説明しました。
笛は唯一の旋律楽器ですが強く吹くことが求められるので、打楽器的な演奏です、という説明が印象的でした。
ちなみに、同じ音が鳴る笛というものは二つとないのだそうです。
3つの楽器の中では大鼓が主導しているのだそうです。
中国の陰陽思想が反映していて、小鼓は陰、大鼓は陽だというのも初めて聞いた話でした。小鼓は馬のお腹の柔らかい皮を使い、大鼓は背中やお尻の硬い皮を用いるのだそうです。
用い方が真逆(小鼓は乾燥を嫌い、常に湿気を与えて、紐を締めたり緩めたりして音程を変えて打ちます。大鼓は湿気を嫌い、炭火で乾燥させて、紐を強く締め上げた状態で打ちます)なので、小鼓の皮は100年以上保ちますが、大鼓は半年くらいで破れてくるとのことでした。
お囃子のワークショップは、笛、小鼓、大鼓の奏者の方々(若い人ばかりでした)がそれぞれ、楽器の特徴を説明しました。
笛は唯一の旋律楽器ですが強く吹くことが求められるので、打楽器的な演奏です、という説明が印象的でした。
ちなみに、同じ音が鳴る笛というものは二つとないのだそうです。
3つの楽器の中では大鼓が主導しているのだそうです。
中国の陰陽思想が反映していて、小鼓は陰、大鼓は陽だというのも初めて聞いた話でした。小鼓は馬のお腹の柔らかい皮を使い、大鼓は背中やお尻の硬い皮を用いるのだそうです。
用い方が真逆(小鼓は乾燥を嫌い、常に湿気を与えて、紐を締めたり緩めたりして音程を変えて打ちます。大鼓は湿気を嫌い、炭火で乾燥させて、紐を強く締め上げた状態で打ちます)なので、小鼓の皮は100年以上保ちますが、大鼓は半年くらいで破れてくるとのことでした。
謡のワークショップでは、梅若基徳さんがリードして、「田村」のサビというのでしょうか、一番華々しい部分をお客さん全員で謡いました。その後、梅若さんは舞台でその部分を舞い、舞の動作を説明しました。
シテは田村麻呂を演じるだけではなく、敵方の動きも演じるんですね! 説明を聞きながら舞を拝見すると、とてもわかりやすくて興味深かったです。
シテは田村麻呂を演じるだけではなく、敵方の動きも演じるんですね! 説明を聞きながら舞を拝見すると、とてもわかりやすくて興味深かったです。
マンガ紙芝居は現代的な感覚の絵でユーモラスにストーリーを解説していました。
この後、半能「田村」が上演されました。
「田村」とは、先にも書いた坂上田村麻呂のこと。東国の僧が清水寺で桜を楽しみ、創建の縁起物語を聞きます。夜、桜の木陰で経を読んでいると武将姿の田村麻呂の霊が現れます。
鈴鹿山の賊を討伐するため軍を進めたが、数の上で敵方ははるかに優っていました。そのとき千手観世音が出現し、千の手に弓をつがえて矢を射たので、敵をことごとく滅ぼすことができました。
「屋島」「箙(えびら)」とともに「勝修羅」と分類される作品で、いわゆる「修羅能」とは全く異なった明るくて陽の気に満ちた曲です。
演者は次の通りです。
坂上田村麻呂 梅若雄一郎(基徳さんの子息)
旅僧 福王知登
大鼓 山本寿弥
小鼓 上田敦史
笛 貞光智宣
後見 梅若基徳
梅若猶義
地謡 笠田祐樹、上田大介、今村哲朗
ほとんどが若い方ばかり。シテの出のとき、何か中心が定まりきっていないような、形にわずかな乱れがあるような印象を受けました。舞も、ときどき形が決まっていないように感じられるところがありました。
でも、それ以外は素晴らしかったです。どの演者からも若い人ならではの力強くて堂々として明るい気が伝わってきて、見ていてもスカッとした良い気分になれました。
この能楽堂では来年3月まで、月に一度の催しが決まっています。この日の体験ですっかり気に入り、自由席なら3000円と、チケットも安いので、しばらく通ってみるつもりです。