冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

文化功労者の中にこの方々が

 今年度の文化勲章受章者、文化功労者が発表されました。15人の文化功労者の中に、私が敬愛していたり、お仕事に興味を持っている方々が5人、含まれていました。
 15人中5人というのはとても比率が高い。こんなことは初めてです。

 まず、女流義太夫の第一人者で人間国宝の竹本駒之助さん。
 9月に、この方の義太夫を初めて聴き、感動しました。場面や人物の心理がまざまざと目前に浮かび上がります。何種類もの声を巧みに使い分けるところにも驚きました。
 82歳。まだまだ活躍していただきたい方です。

 バレエダンサーの吉田都さん。
 このところとんとご無沙汰ですが、以前はクラシックバレエ鑑賞が趣味の一つでした。吉田さんは英国ロイヤルバレエ団在籍の頃から注目を集めていて、当時も舞台を拝見したことがあります。
 その頃、日本人のバレエダンサーは技術面では遜色がないのに、欧米のダンサーと比べて何か違うなあ、とずっと感じていました。それは、首の角度なのでした。
 日本人の場合、首が体の上にまっすぐ乗らず、わずかに前に傾いているのです。そのせいで、踊る姿がもう一つすっきり見えないのでした。

 吉田都さんを初めて見たとき、この人は違う、とわかりました。胴の上にまっすぐに首が伸びています。そのために動きがとてもきれいに見えるのです。日本人バレエダンサーもようやく世界レベルに達したと、うれしくなりました。
 その頃は美しいというより東洋的で愛らしいといったほうがふさわしいお顔だちでした。
 その後、日本に帰ってこられ、熊川哲也さんと組むなどして活躍を続けておられます。帰国後の舞台も拝見したことがあります。
 もう51歳になられているのだと、今回の新聞報道で初めて知りました。

 杉本博司さん。
 写真を使った前衛アートの作家です。私が興味を惹かれるのは、この方が斬新なデザインの茶室を設計したり、自ら構成・演出・美術をこなして上演する「杉本文楽」の取り組みを続けておられるところです。
 ニューヨークに活動の拠点を置いておられますが、日本文化、伝統芸能への造詣と関心の深い方です。69歳。

 高橋睦郎さん。
 当代一流の詩人です。自由律の詩ばかりでなく、俳句や短歌でも優れた実績を残しておられます。
 私が素人弟子として師事している文楽の六代豊竹呂太夫師匠の襲名披露パーティーでは発起人のお一人でした。大阪でのパーティーで着物・袴姿の高橋さんを拝見し、自由闊達な空気感が漂う風貌に目が釘付けになりました。79歳。

 中村吉右衛門さん。
 いうまでもなく、歌舞伎の人間国宝です。何度も舞台を拝見してきました。技量がすぐれているだけではなく、人間性の大きさ暖かさが滲み出ているので、いつも心を打たれます。
 73歳。今の歌舞伎界を牽引している俳優さんです。