冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

湊川神社「神能殿勧進能」

 昨日の午後、神戸の湊川神社で「神能殿勧進能」を見ました。番組は次の通りです。

  舞囃子  「屋島
  仕舞   七曲

 前日よく睡眠をとったのに睡魔に襲われて、ここまでは気持ち良く眠ってしまいました。

 休憩を挟んで、

  独鼓   「花筐(はながたみ)」
  仕舞   「邯鄲(かんたん)」
        「兼平(かねひら)」
        「半蔀(はじとみ)」
        「枕之段」
  舞囃子  「桜川」

 仕舞のうち、上の四曲だけ曲名を書いたのは、どれもまだ見たことのない曲なのに(「枕之段」は聴いているうちに見たことのある曲だとわかりましたが)、謡の内容が聴きとれて、描かれている場面がわかったからです。初心者の私にとって、こんなことは初めてです。

 「邯鄲」は、栄華を極めるという長い長い夢を見て目覚めた青年が、枕元の黄粱がまだ煮えないほどの短い時間だったことに気づくという中国の説話をもとにした曲です。
 舞台では見たことがないのですが、この故事は知っているので、謡の詞章から「あの話だ」とわかりました。

 「兼平」は、木曽義仲の家来のうち「四天王」と呼ばれた中の一人、今井兼平の最期を描いたもの。「平家物語」で読んだことがあり、記憶に残っていたので、謡の詞章から理解できました。

 「半蔀」は確か源氏物語の「夕顔」から採った話だったはず…と思っていたら、やはりそうでした。

 「枕之段」ってなに? と訝っていましたが、「葵上」で六条御息所の生霊が葵上の枕元に現れる場面だとすぐにわかりました。

 仕舞は、今まで聴いていても言葉が聞き取れず、見たことのない曲の場合、どんな場面なのか想像もできないうちに終わってしまうのが常でした。この四曲がわかったのがうれしくて、ささやかな進歩を喜びました。
 舞そのものはまだ上手下手さえもよくわかりません。それでも「かっこいいな」と思いながら楽しんでいます。

 休憩ののち、

  能   「一角仙人」

 シテを観世清和が演じ、この日一番の注目の舞台でした。
 これについては別に書きます。