冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

素人義太夫発表会が近づく

 私は六代豊竹呂大夫師匠に師事して、素人弟子として義太夫を習っています。習い始めたのは、つい先日のように思うのに、もう入門8年目になりました。
 毎年8月末の土曜日に開かれる発表会が、今年は会場の都合で9月2日(日)になりました。総勢41名が参加します。

 文楽好きがこうじて義太夫のお稽古を始めたものの、私は声域が狭くて高い声が出せません。声量もありませんでした。
 それで、義太夫を習い始めてから半年後、ヴォイストレーニングのレッスンを週1回のペースで受けるようになりました。このレッスンのおかげで声量(肺活量)は格段に増え、声もほんの少しですが前よりは高いところまで出せるようになりました。

 ところが一昨年の秋から昨年の春にかけて、しつこく続く咳に悩まされ、ヴォイストレーニングができなくなってしまいました。治ってからも、復帰しなかったので、2年近く、ヴォイストレーニングから遠ざかっています。
 昨年の発表会ではまだそれほどにも思いませんでしたが、今年は格段に声量が落ちたのを実感しています。それに、高い声はやっぱり出ないです。

 こんな状態でも発表会はどんどん近づいてくるので、先月からお稽古に必死でした。わずか6分余り語るだけなのですが、詞章と曲節を正確に覚えなくてはなりません。その上、複数の登場人物の感情を表現して、語り分けなければならないのです。

 今まで、先輩のお弟子さんの語りはそれなりに義太夫らしい感じがするのに、私のはちっともそんな風に聞こえない。なんでだろう? と思っていましたが、そこには音(オン)とか息(いき)など、独特の技術があるのです。
 こういうのも、一つ一つ手探りでつかんで行くしかなく、上達は困難を極めます(師匠は指導してくださいますが、弟子の私の方にそれを理解する力が不足しています)。

 そんなこんなであがきにあがいています。この数日、無理に高い声を出して稽古をしていたら
喉がヒリヒリしてきました。これはいかん! 無理な発声で少しのどを痛めてしまったようです。それで今日は小さめの声で稽古しています。

 ものすごく難しくて大変なのに、義太夫は楽しい。去年あたりから、本気でそう思えるようになってきました。
 本番は能楽堂の舞台で語ります。能楽堂は声がよく響くので助かります。毎年緊張して、思わぬミスをしてしまうこともありがち。落ち着いて、師匠の教えをきちんと守り、正確に語ることを目指しています。