冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

見応え十分なNHKの「テレワークドラマ」

 NHKが「今だから、新作ドラマ作ってみました」というキャッチコピーで、3夜にわたって「テレワークドラマ」を放送しています。打ち合わせ、リハーサル、本番収録とすべて、スタッフと俳優さんも、俳優さん同士も直接には会わずに制作したのだそうです。第1夜は「心はホノルル、彼にはピーナツバター」。5月4日(月)深夜11時40分から0時10分まで放送されました。

 出演は満島真之介前田亜季の二人。遠距離恋愛を続けてきた二人はようやく結婚にこぎつけ、ホノルルで挙式する予定だったのですが、新型コロナの影響で中止することになってしまいました。パソコンの画面を通してやりとりするうちに二人はこれまで抑えていた本音を相手にぶつけ始めます。気持ちの行き違いがあらわになって、もう破局を迎えるのか? とハラハラしましたが、初めて本音を出せたことで結局、今まで以上に心が通い合い、ハッピーエンドで終わりました。

 第2夜は「さよならMyWay!!」。5月5日(火)の深夜11時15分から45分までの放送でした。出演は小日向文世竹下景子です。妻が急死して四十九日を迎えた日、夫のパソコンに突然、妻が現れ、離婚届を突きつけます。保険の営業一筋に働いてきた夫が妻のことをちっとも理解していなかったというのです。夫が激昂してパソコンのスイッチを切ると、時間が元に戻り、再び妻がパソコンの画面に現れます。後半にドキッとするようなどんでん返し(古めかしい表現ですね)がありました。最後はほっこりした気持ちになれる終わり方でした。

 このドラマ、登場人物は二人だけ、セットはそれぞれの人物がいる部屋だけです。二人のやりとりはパソコンの画面を通じて行われます。設定は、新型コロナの影響で今までのようなドラマ作りができなくなったという意味で極めて「今ふう」ですが、中身は昔からあるセリフ劇です。セリフ劇は、よほど力のある俳優さんがそろわないと見ていられません。

 2作とも、30分という、ドラマとしては短めの時間で、場面も動きも限定されているという縛りの中で、片時も目の離せない密度の高いドラマに仕上がっていました。脚本もよくできていましたが、俳優さんたちの演技力に負うところが大きかったように思います。第1話の若い二人は見ていて気持ちの良い自然体の演技でしたし、第2話のベテラン俳優さんたちはさすがに奥行きの感じられる人物表現でした。この試み、とても面白いです。

 第3夜は明日5月8日(金)、夜11時40分から0時10分まで放送される予定で、出演するのは柴咲コウムロツヨシ高橋一生という顔ぶれ。これも期待できそうです。