冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

10回目の素人義太夫発表会が終わりました

   毎年8月下旬に開かれる素人義太夫の発表会が終わりました。豊竹呂太夫師匠にご指導いただいている素人弟子四十数名が観客の前でお稽古の成果を発表する催しです。

 私は今年、入門10年目。「絵本太功記」という長い作品の最後の部分「十段目 尼ヶ崎の段」(通称「太十」、たいじゅう)を師匠が10のパートに区切ったのを、毎年一つずつ語ってきました。今年はいよいよ最後の締めくくりの部分「段切り」です。

 毎年、夏は義太夫のお稽古に明け暮れます。今回はこの「段切り」の部分がとりわけ難しく感じられ、難儀しました。発表会の二日前のお稽古でも、まだできない所が2カ所残ってしまいました。それで、本番の前日も、当日の朝も、当日、自分の出番になるまでの1時間ほどの間もずっと、師匠とマンツーマンで受けた最終のお稽古の録音を繰り返し聞き直して、問題の2カ所を頭に入れようとしました。そして、「大丈夫、できる」と思ったのです。

 なのに本番では2カ所ともできませんでした! 頭ではわかっているのにできないのは、わかっていないということなのか。反射神経が鈍いのかなと思ったりもしました。あんなに必死で稽古したのに…と、がっくり落ち込んでしまいました。

 ところが、舞台を降りてから、何人ものお弟子さん、私が顔も名前も知らない方や、知っているけれど一度も言葉を交わしたことのない方まで、「すごい迫力でした」「感動しました」と声をかけてくださったのです。驚き、そしてうれしかったです。「太十の段切り、かっこいいですねえ。私も早く段切りまで行きたいです」とおっしゃる方もいました。

 例年よりひときわ暑い夏が、ようやく終わりました。