冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

初心者向け俳句講座の受講を続けています

 某カルチャーセンターで開かれている初心者向け俳句講座の受講を続けています。この講座は月1回の開講で、3回で1クールです。私は2クール目に入りました。

 年が明けてから、1回目と2回目を受講しました。講師の先生(40代後半から50代くらいの女性です)がその季節の季語を使った俳句を紹介して、解説してくださいます。

 1回目は、

    切り口の鋭き竹の松飾     有馬朗人

    くらがりに音の生まれて若井汲む    鷹羽狩行

    元日の山みな低き大和かな     大峯あきら

    赤ん坊のひとつ年とる母の胸    長谷川櫂

    花散らしつつ山茶花を活けにけり    片山由美子


 など、9句でした。
 私はこの中では有馬朗人さんの句が好きです。「か」行の音の繰り返しから生まれる硬質な響きが心地よいのです。竹林の中で竹を伐るときに響き渡る「カーン」という音のような清々しさが感じられ、新年にふさわしい句だと思います。

 先生は奈良在住で、東大寺の修二会にお詳しくて、そのお話を1回目と2回目にわたってしてくださいました。

 修二会(二月に修する法会)は全国のお寺で行われていますが、東大寺が特に有名です。それで、季語で「修二会」といえば東大寺の修二会を指すのだそうです。お水取りという行事は東大寺だけのものです。
 752年に始まってから、一度も途絶えたことがありません。僧たちが懸命に祈っているのは東大寺の繁栄ではなく、世界の平和です。

 2月の1日から14日まで、行が行われます。悔過(けか)法要と言って、祈りの前に、まずこれまでの罪をおわびする行をします。11人の僧が一日一食で過ごし、ひたすら謝罪を続けます。その後で祈りに入るのだそうです。
 あのよく報道される場面で松明を持って走っているのは僧ではなく、僧の付き人、童子なのだそうです。

 行の中で、僧がこれまでに平和に貢献した人物の名前を聖武天皇から順に読み上げます。ずいぶん昔のあるとき、帳面を読み上げていた僧がふと見ると、緑色の衣をまとった女性が暗がりに立っています。そして、「なぜ私の名前を読み上げないのか」と責めるのです。そこは女人禁制の領域で、女性が入ってくることなど考えられないのです。

 僧は、少し考えてから、やや小さめの声で「青衣(しょうえ)の女人」と読み上げました。それを聞いて、女性の姿は消えました。このころ、緑と青とはどちらも青と称されていたので、「青衣」としたのだそうです。
 これ以来、毎年必ず「青衣の女人」は小声で読み上げられるのだそうです。

 修二会には謎の部分が多いのですが、それを長年にわたって研究し続けたのが佐藤道子という学者さんです。
 修二会には女人禁制の部分があり、そこには研究者も立ち入ることができないのですが、それ以外の部分では、佐藤さんのあまりの熱心さに東大寺の側も心を打たれ、協力するようになったそうです。研究成果は本にまとめられています。

 2度目の講座では、早春の俳句7句のほかに、修二会を読んだ俳句5句が紹介されました。

 早春の俳句

    犬ふぐり三時のバスが通ったぞ     有働 亨

    冴えかへるもののひとつに夜の鼻    加藤楸邨

    雪とけて村いっぱいの子どもかな    小林一茶

    二月尽何か大きな忘れもの        下村ひろし

    今日何もなにもかも春らしく        稲畑汀子

などです。

 修二会を詠った句

    法螺(ほら)鳴つて鳴つて修二会の火の駆くる   大野林火

    つまづきて修二会の闇を手につかむ     橋本多佳子

    修二会走る走る女人をおきざりに       橋本多佳子

    刻(とき)みじかし走りて駆けて修二会僧   橋本多佳子

    春寒し水取のあと二日ほど      阿波野青畝

 次回、3月29日は句会です。