冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

朝ドラ「カムカム」、第19回は「神回」でした

 きのう放送された朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の第19回は、今風に言うところの「神回」でした。

 立ち直った金太は焼け跡にバラックを建て、和菓子屋「たちばな」を再開します。作るのはおはぎだけで、砂糖はないのでサッカリンを使います。安子は子どもの頃、和菓子屋を継ぎたいと思っていたのに女は作業場に入るなと言われ、悲しい思いをしたのですが、元気になった父からおはぎの作り方を教えてもらうことができ、喜びます。

 二人が店の前でおはぎを売っていると、戦災孤児が1個盗って食べてしまいます。金太はその男の子に一箱のおはぎを渡し、自分の才覚でそれを売ってこい、1割はお前にやるから、そこからおはぎ代を返せと言います。その様子を見ていた大人たちは「帰ってくるわけがない」と金太の行動を馬鹿にします。

 安子がどうしてあんなことをしたの? と尋ねると、金太は、あの子が算太に似ていたから、あの子が帰ってくれば算太も帰ってくると思った、と話します。金太の息子、算太(安子の兄)は明るく優しい一面、自堕落な性格の人物で、金太は息子を勘当し、出征するときも家の敷居をまたがせず、見送りにも行かなかったのです。しかし金太はそのことを強く後悔していました。

 安子が雉真の家に帰ったあと、夜更け、戸を叩く音がします。「おはぎのおっちゃん!」と、あの孤児の声です。「帰ってきたんか」と金太が戸を開けると、そこに立っていたのは生還した算太でした。

 算太は金持ちの婦人を騙しておはぎを高く売ってきたことを自慢げに話します。金太はおじいちゃんもおばあちゃんもお母ちゃんも死なせてしもうた、と詫びます。算太は「気にすんな。戦争やからしょうがない」と父を労ります。金太は泣き、算太の目にも涙が滲みます。

 

 と、ここまで来て、「あーよかった」と思っていたら、最後にナレーション(城田優)が「あくる朝、金太が死んでいるという知らせが入りました。」と告げて終わりました。

 廃人同様になっていたのに、なんでそんなに早く元気になるの? と、引っ掛かりを覚えていたのですが、このドラマ、なにしろ展開が早い。3代の女性の物語を半年で描こうというのですから、どんどん話が進んでいきます。だからなのかな、と思っていました。

 金太は、本当に元気になったわけではなく、生命の最後の炎を燃やして店を再建したのでした。それは、「たちばな」があった場所に「たちばな」の幟を立てて再開しておかないと、算太が帰ってきたとき、家族がどこにいるかわからなくて困るだろうと思ったからなのでした。

 「おはぎのおっちゃん」と戸の外から呼んだのはあの孤児だったのに、戸を開けたらそこにいたのは算太! ここでまた頭に?マークが湧きました。これらの疑問は最後のナレーションでいっぺんに吹き飛び、胸が詰まるような思いに襲われました。

 算太が相変わらずの人を騙すやり方でおはぎを売り、儲けてきた話をしたとき、金太が怒らないのが最初、私には不思議でした。なんでだろう? と考えて、わかったのです。生きて帰ってくれさえすれば、それ以外のことはどうでもいいのだと。金太の望みはただそれだけなのだと。

 こんなふうに疑問を抱いて、それについて考えると、その人物についての理解が深まり、感動も深まります。藤本有紀さんの脚本はやはりうまいです。

 安子の夫、稔は予想どおり戦死していました。母と祖母、父、夫まで失って、これから安子はどうなるのでしょう。ネットでほかの人のブログを読んでいたら、安子の娘について、最初からある設定が明らかにされていることがわかりました。そうなると…。やはりYOU演じる義母がむごいことをしそうです。