冬すみれ雑記帳

山を歩いたり、お能を見たり。

お茶(茶道)の楽しみ その1

 40代の後半からお茶を習い始めて、一時は月に3度も4度も先生宅に通うほど、夢中になっていました。自分では月に10回くらい行きたいと思っていました。

 お茶のお稽古は、「お点前(おてまえ)」を覚えることが中心です。

 「お点前」というのは、お茶を点てる(たてる)ための一連の動作です。お茶を点てるための道具を用意する→お茶を点てる→お客にお茶を出す→道具を片付ける。ごく簡単に言うと、これが一連の流れで、間にお客とのやりとりが入ります。

 例えば「道具の用意」の中には、お茶室に道具(茶碗、茶器、茶杓など)を運び込む、道具を帛紗(ふくさ)という絹の布や茶巾というガーゼのような布で拭いたり、水を使って清める、という動作が含まれます。どの過程でも動作の順番と方法は細かく決められていて、お稽古ではその動作を繰り返し行なって覚えていきます。

 お茶一服点てるだけなのに、なんでそんな面倒なことをするの? と思う人も多いでしょう。でも、お茶を習ってみると、この一連の動作を無駄なく美しくやっていくことに、大きな意味があることがわかってきます。

 決まった動作に集中していると、いつの間にか気持ちが平らかになるのです。お茶を習い始めてから15年くらいの間は仕事が忙しく、いつも頭の中がざわざわしていました。ところがお茶の先生宅に行ってお稽古に集中すると、お稽古が終わったときには頭の中がすっきりとクリアになっていました。この気持ちよさはお茶を習うまで味わったことのないものでした。

 三井物産を設立した益田鈍翁、東急の社長・会長だった五島慶太、阪急・阪神ホールディングスの創始者小林一三など、著名な財界人が何人もお茶の世界にのめり込んだ理由は、いくつかあるでしょうが、そのうちの一つはきっとここにあると、私は思っています。